STORY

街を一望できる丘には古城がそびえ、石畳におおわれた道がレンガ造りの家々の間をぬって走る――近世のおもむきを残す都市 『レヴィンダム』
その下町に看板をかかげる喫茶店 『バーディーズ・パーチ』 は 「とくにコーヒーが旨い」 と近所でも評判の店だった。
……評判の店 “だった” 一年前までは。

今はもう、見る影もない。度重なる不幸にみまわれた店は、すっかりホコリと借金にまみれてしまっている。
打ちひしがれた店主(オレ) は酒におぼれ、我が身の不幸をただ嘆くばかり。
だが、俺がいくら悲しみに暮れようとも、過ぎさりし日々が戻ることはない。
一日一日と借金の返済期限は迫ってくる。 このままでは唯一残された居場所がなくなってしまう……
四人の少女たちが店に転がりこんできたのは、そんな頃だった。

最年長で、みんなのまとめ役。どこか気品ただよう “フィオナ”
華やかな容姿とは裏腹に、皮肉屋さんで気が強“エレン”
いつも元気! どんなトラブルだって飄々と受けながす一匹狼 “メグ”
ドジだけどがんばり屋さん。純真な最年少 “プリス”

それぞれの事情から自分の居場所をなくし、さまよう少女たち。
木々の葉は紅く色づき、風が冷たさを帯びはじめる。
たそがれゆく季節の中、それでも毎日をけなげに明るく生きる彼女たちの姿を、ふと気づけば俺は、まぶしく見つめるようになっていた。
店はふたたび息を吹きかえす。
ひとまわり以上も年下の少女たちの若々しさが、笑顔が、自慢のコーヒーに華を添えてくれる。
ここは “とまり木”小鳥さんたち、今はゆっくりお休み。いつか大きく羽ばたく日のために――